コイワズライ

久しぶりに再会した伊吹(いぶき)は、当たり前だけどやっぱり伊吹(いぶき)で。


背が低い私がジャンプしながら黒板を消していると、チビは大変だなとバカにして笑う。
髪型をポニーテールにしていると引っ張ってくるし、私が伊吹(いぶき)の前を通るとわざと足を掛けてこかそうとするし、廊下で友達と話していると膝カックンしてくるし。


小学生の時にされていたイタズラを高校生になっても仕掛けてくる。どうやら成長したのは身体だけのようだ。


「みてみて!ハイスコアー!!」


「10万ポイント!?新奈(にいな)すげぇー!!」


最近ハマっているパズルゲーム、千晃(ちあき)とスコアを競い合っていて今初めて私が千晃(ちあき)を追い抜いた。嬉しくて千晃(ちあき)にスマホ画面を見せていると横からひょいっとスマホを奪われた。


「どれどれ?おー、すげぇなぁ~」


「ちょ、返してよ」


伊吹(いぶき)がスマホを高い位置まで掲げて背伸びをして取り返そうとする私を見て意地悪くニヤニヤしている。


「あ、手がすべった」


勝手に私のスマホを操作しパッとスマホを手放した。


「わっ、っとと」


なんとかスマホを受け止め、画面を確認する。


「…え?待って待って、まさか伊吹(いぶき)…消した?」


「なんのこと?」


「さっきのパズルゲームのアプリ!消去しちゃったの!?」


首を傾げてとぼけている。


「バカ!!ハイスコア出すのにどれだけ苦労したと思ってんの!?ありえない!!アホ!バカ!バカ伊吹(いぶき)!!」


伊吹(いぶき)の足を蹴ったりグーで胸を殴ったりしてもびくともしない。口笛をふいてあさっての方向を見ている。


(ふざけ散らかすのも大概にしろよ!!)


千晃(ちあき)~私の代わりに伊吹(いぶき)を再起不能にして~」


新奈(にいな)、泣きそうな顔して恐ろしいこと言うね。伊吹(いぶき)、さっきのはさすがに新奈(にいな)がかわいそうだよ」


「そうだ、そうだ!反省しろ!そんな子に育てた覚えはない!ママンが泣いてるぞ!」


千晃(ちあき)の後ろに隠れながら反撃。


新奈(にいな)、国会の野次みたいになってるから」


「ピーピーうるせぇな、チビが」


伊吹(いぶき)


千晃(ちあき)に釘を刺されてチッと舌打ちをし、どうもすみませんでしたと棒読みで謝る。


「ハンバーグが食べたいな~」


「は?」


「学食のハンバーグおいしいんだよね~」


「お前、調子のってるとーー」


伊吹(いぶき)


「……くっそ、わかったよ!おごればいいんだろ!」


「ぃやったぁ~!!」


千晃(ちあき)と顔を見合わせてハイタッチ。


「お前は自分で払え!」


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