コイワズライ

昼休み、3人で食堂に行き伊吹(いぶき)は2人分の食券を買ってカウンターに並んだ。そして出てきたメニューは


「カレー?…カレー注文した?」


「いや、俺カツ丼。ごめん、金なくてハンバーグ買えなかった」


「え?伊吹(いぶき)はカツ丼なのに私はカレー?伊吹(いぶき)がカレー食べて私がハンバーグ食べればよかったんじゃない?」


「なんで俺が食いたくないカレー食わなきゃなんないの?」


「いや、悪いのはアンタでしょ!」


「うるせーな、おごってやったんだからありがたく食えよ」


「2人とも、後ろつかえてるんだからケンカは後にしてよ」


「だって伊吹(いぶき)がー」


カレーが乗ったトレーを持ったまま伊吹(いぶき)と言い合いをしていたらドンッと誰かにぶつかった。


「あ」


「え?…あぁあぁーー!!ごめんなさいぃーー!!」


ぶつかった拍子にカレーが飛び散り男子生徒のアイボリーのベストに黄色いシミが付いてしまった。


「あぁ、大丈夫。気にしないで」


トレーを持ったままぺこぺこと頭を下げていると、イケメンが爽やかな笑顔を浮かべていた。


(ま、眩しい!すっごいキラキラしてる!王子様かよ!)


「あ、(さく)先輩」


「おぉ、伊吹(いぶき)。友達?」


「友達っていうかペットっていうかネズミ?ウチのネズミが迷惑かけてごめん」


「元はと言えばアンタのせいでしょ!」


「ふはっ、ネズミ?」


「幼なじみですよ」


「あぁ、千晃(ちあき)


「先輩久しぶり~」


「本当にすみませんでした!」


「大丈夫だよ。後で伊吹(いぶき)千晃(ちあき)に洗わせるから」


「「え!?」」


「ははっ、冗談だって。じゃあな」


と爽やかに去って行った。


「ねぇ、あの人誰!?知り合い!?」


席に座り伊吹(いぶき)千晃(ちあき)に食い気味に聞いた。


「2年の如月(きさらぎ)(さく)さん、同じ中学の先輩」


「めっちゃかっこよかったね~優しくてイケメンだなんてまさに王子様!」


「うん、(さく)先輩は優しいよ」


「だってぶつかった上にカレーぶっかけたのに嫌な顔一つしなかったよ!人格者だわ~!」


「せっかく俺がおごってやったんだからさっさと食えよ」


話に参加せずに黙々とカツ丼を頬張っていた伊吹(いぶき)がイライラした様子で私を見る。


「まったく、伊吹(いぶき)とは正反対だよ。(さく)先輩の爪の垢を煎じて飲ませたいわ」


「言っとくけど先輩彼女いるからな」


「え~そっか~イケメンだもんね」


「そうでなくてもお前なんか相手にしないから安心しろ」


「は?本当一言多いんだから」

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