コイワズライ

放課後、千晃(ちあき)と私、まだ不機嫌な伊吹(いぶき)の3人で帰ろうと下駄箱で靴を履き替えていると、またばったり(さく)先輩に会った。


「おー、よく会うね」


「ミルクティーありがとうございました」


「先輩、気をつけた方がいいよ」


「ん?」


「コイツ、先輩にミルクティーもらったってやけに騒いでさ。先輩のこと優しいとかかっこいいとか王子様だとか言ってんの。そのうちストーカーされるかも」


「な、なに言ってんの?そんなことしないよ」


「小学生の時、俺の後ちょこちょこついてきてたくせに。マジうざかったわ。今だって俺と千晃(ちあき)につきまとってんじゃん。鬱陶しいんだよ」


伊吹(いぶき)、そんな言い方ーー」


「先輩、あの、私ストーカーとかしないので!安心してください!あ、なんか安村みたいですね、あははは。じゃあ、さようなら」


自分がなにを言っているのかわからない。とにかくこの場にいたくなくて、素早くスニーカーに履き替えて走って校舎から出た。


***


伊吹(いぶき)~さっきのはないな」


「そうだよ、いくら嫉妬してるからって新奈(にいな)がかわいそうだ」


「アイツがイラつくことばっかするから」


「早く追いかけろ」


「なんで俺が?」


新奈(にいな)泣いてたよ」


伊吹(いぶき)~」


伊吹(いぶき)


「……っ、はいはい。わかったよ!行けばいいんだろ!」


渋々追いかけて行った伊吹(いぶき)の背中を見送る2人。


「本当、素直じゃないんだから」


「ははっ、千晃(ちあき)も大変だな」


新奈(にいな)関連のことになると振り回されてる気がする…」


「そうなの?」


「昔の話なんだけど、新奈(にいな)が引っ越した後手紙くれて返事を出そうとしたら出すなって伊吹(いぶき)が」


「なんで?」


「俺が出してから出せって」


「なんだそれ」


伊吹(いぶき)、返事になにを書けばいいのかわからなくて悩んで悩んで、結局返事書けなかったんだ」


「そんだけ好きってことか」


「自覚ないけどね」


「…マジ?」


「厄介でしょ?」


「う~ん…かなり」
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