コイワズライ

2

沙良(さら)、ノート書けたら俺の机に置いといて」


「え?あ、うん。もうすぐ書き終わるから」


「1分以内に書き終わらないと一人でノート全部持ってってもらうからね」


「え~~急ぎます」


「ふふっウソだって」


クスッと笑うと提出されたクラス全員分のノートを教卓に取りに行く優斗(ゆうと)くん。


(からかわれた、のかな…)


私は急いでノートを書いて優斗(ゆうと)くんの机に置いた。全員分のノートを抱えた優斗(ゆうと)くんが自席に戻ってきた。


「これで全員分」


私のノートを重ねて全員分のノートを抱え直し教室を出て行ってしまった。


「え?優斗(ゆうと)くん?」


慌てて彼の後を追う。


「私も半分持つよ!」


「大丈夫。沙良は黒板キレイにしといて。次の授業山田(やまだ)先生だから黒板汚れてると怒るんだよね」


「え、でも…」


優斗(ゆうと)くんと私は今週、週番に当たっている。週番は黒板消しや提出物あつめ、花瓶の水替えや日誌書きなどの雑用を1週間ごとに交代する当番。今日で3日目なのだけど、優斗(ゆうと)くんと一緒に行動してわかったことがある。
それは…


優斗(ゆうと)!英語の辞書貸して!」
(みなと)いい加減自分の持ってこいよ」
「へへっいつも忘れちゃって」
「ロッカーにあるから勝手に持ってけ」
「サンキュー!」


「あ、優斗(ゆうと)先輩CDありがとう」
(なお)どうだった?」
「2曲目が一番すきかも」
「俺も。コピるには難しいけど」
「さすがにね~また候補考えとく」
「おー探しとくわ」


「あー優斗(ゆうと)!そのCD私にも貸して!」
春名(はるな)先生ロックなんか聞くの?」
「彼氏がこのバンドすきなの。私は興味ないけど」
「ふ~ん。これ彼氏に貸すの?」
「彼氏は持ってるよ」
「じゃあなんで借りるの?」
「話題作り?私も興味あるフリするの。健気でしょ~」
「うわ、黒っ」
「大人になればこういうことも必要なの」


沙良(さら)はこんな大人になっちゃダメだからね」
「え!?えっと」
「ひど~い。アンタたちも大人になれば色々わかるわよ。じゃあ借りてくね~」


「まったく、騒がしいんだから」
「あはは、春名(はるな)先生ってかわいいよね(急に話振られて焦った~)」


…という具合に、優斗(ゆうと)くんと一緒にいるといろんな人に話しかけられる(優斗(ゆうと)くんが)。生徒教師男女問わず。今だって廊下に出ただけで3人も。


つまり、優斗(ゆうと)くんが地味だから話しやすいんじゃなくて優斗(ゆうと)くんは誰にとっても話しやすい人。地味だなんて言ってごめんなさい。

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