コイワズライ

着いた先は屋上で、ぽつんと寂しく配置してあるベンチに座る。さっきまで青葉(あおば)くんに握られていた右手をじっと見つめる。


うわぁ~青葉(あおば)くんに触っちゃったー!!!やばいー!!これ今年の運、全部使い切っちゃったんじゃない!?洗わないったら洗わない!!次いつ青葉(あおば)くんに触れるかわかんないもん!!…あぁ、なんかマジで変態思考なんだけど。危ないわ…ってか、青葉(あおば)くんの話ってなんだろう?


(なぎ)?またぼんやりしてるでしょ?」


私と青葉(あおば)くんの間に人が1人座れるスペースがあったのに、いつの間にか青葉(あおば)くんが私の隣に座っていた。しかも、さっきみたいに顔を覗きこまれている。


だから、近いってばー!寿命が縮まるよー!


「俺といるのつまんない?」


寂しそうに苦笑する顔を見た瞬間、胸がえぐられたみたいに痛くなった。


痛い痛い痛い痛い、破壊力はんぱない…


「そんなことないよ。楽しいよ?」


「楽しそうには見えないけど」


今度はため息をついて目を伏せた。


あー今すぐにカメラにおさめたいぃ!じゃなくって!そんな悲しそうにされると私まで悲しくなっちゃうよ。


「あ、青葉(あおば)くんといるとね、なんか緊張しちゃうっていうか恥ずかしいというか」


「気まずい?」


「そうじゃないんだけど、ドキドキしちゃってうまく話せなくなるんだ」


(みなと)優斗(ゆうと)とは楽しそうにしてるよ?」


「それは、だって友達だから」


「俺は友達じゃないの?」


青葉(あおば)くんは…」


青葉(あおば)くんは私の中で特別だから。


青葉(あおば)くんは、友達とは違う」


「そうなんだ…」


それから青葉(あおば)くんは黙ってしまって、私もどうすればいいのかわからなくて下を向いた。


「…っ、ごめん。帰ろっか」


沈黙を破り、ベンチから立ち上がった青葉(あおば)くんはいつもの青葉(あおば)くんだけど、なんだかやっぱり寂しそうで。私は咄嗟に青葉(あおば)くんの手を握った。


「ん?」


ど、どうしよう…なにも考えずに引き止めちゃったけどなにか言わなきゃ。青葉(あおば)くんが不思議そうにしてるし。なにか言わなきゃ。えーっと…


「き、昨日、青葉(あおば)くんの席に座ってごめんなさい!!」


「…え?」


わーーー変な空気になった……
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