コイワズライ

3

資料室、次の世界史の授業で使う掛地図を取りに来たけどみつからない。確か、端の方に立て掛けてあったはずなんだけど…


(あ!もしかして、あれかも!)


棚の一番上に見覚えのある色の軸と紐がみえた。でも私の身長では背伸びをしてもとどかない。手を伸ばしてジャンプしてみると指先が軸の先をかすめた。


(とどくかも…!)


数回ジャンプして軸の先を手前に移動させる。


(もう少し…)


何度めかのジャンプで掛地図の軸が転がってきた。


(よし!落ちてくる…)


「え?」


ドサドサドサドサドサッ!!


掛地図に紛れていろんな物が一緒に落ちてきた。逃げる暇もなく、目を瞑って頭を守るのが精一杯だった。


(………痛くない?)


「~~~~~っ!!!」


顔を上げると苦痛の表情をしている優斗(ゆうと)くんの顔が近くにあった。気づくと優斗(ゆうと)くんの胸の中にいた。私を包んでかばってくれたみたい。


優斗(ゆうと)くん!?」


「…沙良大丈夫?」


優斗(ゆうと)くんこそ大丈夫!?」


「…あたま、痛い。今ので軽く3年分の記憶飛んだ…」


「うそ!?ど、どうしよう!?私、春名(はるな)先生呼んでくる!!」


立ち上がろうとしたけれど優斗(ゆうと)くんに抱きしめられて動けない。


「……えっと」


戸惑っている私を余所に優斗(ゆうと)くんの身体が小さく震え始めた。私の肩に顔をうめてクックッと喉を鳴らして笑っている。


(またからかわれた…?)


沙良(さら)、いい匂いする…シャンプーの匂い?」


今度は私の首筋に鼻をくっつけてクンクン匂いを嗅ぎ始めた。


「なななな、なにしてるの…くすぐったいよ…」


慌てて離れようとしたら優斗(ゆうと)くんの顔が至近距離にあって慌ててうつむいた。


(今、すっごいみられてるよ~~~近すぎるよ~~~)


顔が熱くなって胸がドキドキして頭がぼうっとする。どうしてこんなことになってるの。


「ねぇ、沙良(さら)?」


「はい…」


おそるおそる顔を上げると、さっきよりも近くに優斗(ゆうと)くんの顔が。


(キャ~~~なに~~~……あれ?でもなにか違和感が…)


もう一度優斗(ゆうと)くんの顔を確認すると、あるはずのものがなかった。


優斗(ゆうと)くん、メガネは?」


「え?」


ぺたぺたと自分の顔を触る優斗(ゆうと)くん。


「あーどっかいったっぽい」


グシャ…


(なにか嫌な音が…)


足元をみると、フレームが曲がってレンズが外れた優斗(ゆうと)くんの丸メガネが。


(えーー!!なんてことを!!)

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