ヨルの探偵Ⅰ
それから夜も22時を回り、蒼依くんと虎珀くんは連絡先を交換して「またすぐ会おうな〜」と約束をした後、bsの2人は自分の家に帰っていった。
最後に「あ、この家にも遊びに来んね」と捨て台詞も吐かれたが、耳を塞いで現実逃避した。
本当に恭たちを引き連れて遊びにやってきそうな蒼依くんだけど、彼は情が深いから一番の理由はやっぱり虎珀くんなんだろうな。
お風呂上がりのアイスを食べながら、隣に座った朝陽に目を向ける。
虎珀くんはお風呂で、リビングには私と朝陽だけ。見てもないニュース番組に朝陽は目向けたまま口を開いた。
「虎珀の家の事、知ってたの?」
「詳しいことは知らないよ。何も聞いてないからね」
「……じゃあ、なんで虎珀のこと」
多分悪い意味でなく、純粋な疑問を口にしようとした朝陽に、理由の一つを話そうかと、目を瞑って、言葉を発した。
「────朝陽が、気にかけてたから」
そう言って、目を開けて朝陽を視界に入れると、無表情がデフォルトのはずの朝陽の表情が目を丸くし、何か言いたげに口をはくはくと動かす。
困惑やら驚きやらが入り交じった表情の朝陽に笑みが溢れながら、私は柔らかい髪を撫でた。
小さな口元をキツく結んだ朝陽に、もっと甘えてもくれてもいいのにと、初めて会った時のことを思い出す。
まだお互いをよく知らない、夏の暑い日だった。