ヨルの探偵Ⅰ
あの日から距離は縮まったようで、やっぱり遠い姉弟とやらの関係に、私はどうしたらと何度も考えている。
でも、それがいつか杞憂になるその日までゆっくり近づければいいと思う。
まだ時間はあるから。
ガチャ、とドアが開く音がして虎珀くんがお風呂から上がったことがわかる。それと同時に朝陽が「撫でるの終わり」と頭を避けた。
「なになに、朝陽ってばお姉ちゃんに甘えてるとこ見られるの恥ずかしいの〜?」
「うるさい」
「アハハ、顔赤い! 可愛い!」
「なに楽しそうじゃん! オレも混ぜてー」
タオルを肩にかけて、まだ濡れてる頭で突っ込んできた虎珀くんに朝陽が「ドライヤー!」と怒りながら、その様子を私は微笑ましく鑑賞する。
恥ずかしかったのか朝陽はまだ顔を赤くしたまんまだけど、虎珀くんは気づかなかったようだ。
仲のいい2人を横目に、溶けかけのアイスを齧る。
大丈夫。時間はある。無限でなくても有限の時間が残ってる。きっと間に合うはずだから。
誰にも気づかれないように、思いを馳せた。
有限の終わりが来る日まで、どうか何も知らず幸せに暮らせますように。
なんてね。