ヨルの探偵Ⅰ
危険なドロケー大会
いつもならハッピーフライデーなのに、今日は憂鬱フライデー。
なんでって?
「ふざけんな〜! 雨降ってよ! うわ、ケーサツ!」
「なぁ、俺いつまで抱えて走ればいいの」
「僕も走るの疲れたんだけど。蒼依しつこすぎ」
「月夜ちゃ~ん! 蒼依くんが捕まえてあげるからね〜! あとついでに翔と莉桜も〜」
「「「うわぁ」」」
そう、待ちに待ったドロケー大会の日だからだ。
笑顔で追い掛けてくる蒼依くんに、3人同じ反応をした。
晴天の中、決行されたのは新入生歓迎のドロケー大会。皆が朝から頭に鉢巻をつけて、ジャージで校舎内やグラウンドを駆け回っている。
あの蒼依くんと虎珀くんの再会から数日後。ドロケー大会の日程とチーム分けがされた。
赤がケーサツ。黒がドロボー。
面倒なことに赤のケーサツに、恭と蒼依くんと優介くんの留年トリオで、黒のドロボーに、私と翔くんと莉桜くんが分けられたのだ。
「さいあく、ケーサツならサボれたのに……」
「蒼依しつけぇから、撒いて一旦どっかに隠れた方が良さそう」
「裏庭、コンテナの中」
「わかった。莉桜」
「はいはい」
ま、強いていうなら賢い莉桜くんと翔くんと一緒なのが救いかな。言葉が少なくても理解してくれる。
鈍足の私は俊足の翔くんに抱えられたまま安全場所だけ指示して、とにかくしつこい蒼依くんからひとまず逃げ切ることに成功した。