ヨルの探偵Ⅰ
危険なドロケー大会


 いつもならハッピーフライデーなのに、今日は憂鬱フライデー。

 なんでって?


「ふざけんな〜! 雨降ってよ! うわ、ケーサツ!」

「なぁ、俺いつまで抱えて走ればいいの」

「僕も走るの疲れたんだけど。蒼依しつこすぎ」

「月夜ちゃ~ん! 蒼依くんが捕まえてあげるからね〜! あとついでに翔と莉桜も〜」

「「「うわぁ」」」


 そう、待ちに待ったドロケー大会の日だからだ。

 笑顔で追い掛けてくる蒼依くんに、3人同じ反応をした。

 晴天の中、決行されたのは新入生歓迎のドロケー大会。皆が朝から頭に鉢巻をつけて、ジャージで校舎内やグラウンドを駆け回っている。

 あの蒼依くんと虎珀くんの再会から数日後。ドロケー大会の日程とチーム分けがされた。

 赤がケーサツ。黒がドロボー。

 面倒なことに赤のケーサツに、恭と蒼依くんと優介くんの留年トリオで、黒のドロボーに、私と翔くんと莉桜くんが分けられたのだ。


「さいあく、ケーサツならサボれたのに……」

「蒼依しつけぇから、撒いて一旦どっかに隠れた方が良さそう」

「裏庭、コンテナの中」

「わかった。莉桜」

「はいはい」


 ま、強いていうなら賢い莉桜くんと翔くんと一緒なのが救いかな。言葉が少なくても理解してくれる。

 鈍足の私は俊足の翔くんに抱えられたまま安全場所だけ指示して、とにかくしつこい蒼依くんからひとまず逃げ切ることに成功した。

< 109 / 538 >

この作品をシェア

pagetop