ヨルの探偵Ⅰ
先程出た名前、莉桜が好む場所。俺は目星のついてる図書室に向かって歩みを進めた。
こちらも度を超えて女が苦手。困ったことに女のいる教室なんてやだと駄々を捏ねてサボる始末だが、強く言えないのは訳を知っているから。
ただ、問題なのはサボりすぎなこと。図書室か溜まり場に入り浸って、既に留年予備軍なのはどうにかしなければならない。
図書館の扉を開ければ、女王様のような出で立ちの幼馴染が、案の定本を読み耽っている。
やっぱりいたなと口を開けば、遮るように莉桜が声を響かせた。
「扉閉めて、優介」
「……ハイハイ。本当に女王様だな、お前は」
「僕、女じゃないからやめて」
「わかったよ、莉桜」
名前を呼べば満足そうに口角を上げて、頬杖をついたまま本に視線を戻す。
女王様とあだ名がついている莉桜は、俺らの中では小柄で可愛い容姿だが性格は全くもって可愛げがない。
好き嫌いがはっきりしていて、独善的で頭が良く、眉目秀麗という言葉がよく似合う。
目立つのはその顔立ち、性格だけでなく、ストレートで艶のあるローズマダーといった濃い赤紫のような髪色は校内では莉桜だけ。
俺らの集団が目立つし、地毛の髪色でいる人の方が少ないため、ある意味馴染んではいるが。
一時期、どこか不思議な国のハートが好きな女王様のようだと囁かれていたのは口が裂けても言えない話だ。
まぁ、女を近づけなければさほど癇癪を起こさない莉桜もまだマシだ。注意深く見ていれば問題は起こさない。
問題は、他だ。毎日毎日、何かしら問題が起きて事件と化してる。
「……蒼依、見てないか?」
「朝、他校の女子ナンパしてたから置いてきたけど」
「そっか。うん」
「どうせナンパしてその気がなくなったら置いてくるから、もう少しで来るんじゃない?」
てことは、もうすぐ来るか。