ヨルの探偵Ⅰ


 正直、チーム分け前から嫌な予感がしてたよ。発表されたとき、まずドロボーだったことに落ち込んで、さらに蒼依くんがケーサツなことに2度落ち込んだ。

 面倒になることが目に見えていたからだ。

 彼なら必ず、面白がって全力で捕まえようと追ってくる。やる気のない恭や優しい保護者の優介くんと違うのだ。

 結局、当日になり私や翔くんに目を付けた蒼依くんに朝から追われてるわけだが。


「足遅すぎじゃねぇ?」

「だ、だから最初に言ったじゃん! 私の足の遅さにはねこもびっくりだって!」

「ねこ」

「うー、やだぁ! 蒼依くんに捕まるなんて屈辱すぎるからやだよ〜! 翔くん頑張って〜」

「俺、抱えて走るの前提かよ」


 だって走れないもん。

 ダメ? と上目遣いで翔くんを見上げると歳下なのに年上らしい翔くんは「駄目じゃねぇけど……」と甘やかしてくれる。

 今度絶対お礼するので、できれば後半戦もよろしくとお願いしといた。

 莉桜くんも足は速いのだけど、体力はないらしいから私を抱えて走るのはむり。まだ距離感も掴みかねてるし、仲良し翔くんにしかこんなこと頼めない。

 このメンバーに優介くんがいればとても心強いのだけど、彼は今日は敵さんだ。

 本当に、こんな企画を立てた教師陣に苦情を入れてやりたい。運動音痴に配慮してほしいね。

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