ヨルの探偵Ⅰ
融解点


〈 仙波 蒼依side 〉


 ゾンビの呻き声。テレビから鳴る銃声。握られたコントローラーから聞こえる操作音。そして、「殺れ!」だの「撃て! 早く!」だの周りから飛ぶ野次。


「…………何が何でこうなってんの?」


 俺は明らかにおかしい状況に、普段ならしないツッコミの疲労で困憊していた。

 6時間耐久でゾンビゲームをしていた朝陽くんと虎珀の元に来てから、プラス3時間、俺は無理矢理コントローラーを握らされてゾンビを撃ち殺している。

 無言の翔もゲームに参加して、莉桜と優介は観戦し、自由気ままな恭はソファーで爆睡。

 カオス。どう鑑みてもカオス。

 そもそも、俺らはこんなことをするために水無瀬家に来たわけじゃない。

 本来の目的を俺以外忘れてるこの状況で、漸くゲーム廃人の2人がコントローラーを手放した。


「んん〜っ! つっかれた!」

「お疲れ」

「朝陽ご飯食べようぜ〜! ……ってあれ? 蒼兄はなんでいんの?」

「え? 虎珀ちゃん嘘だよね? 来て早々にコントローラー握らされてゾンビゲーム3時間やってたんだけど?」


 いや、まじで、え〜?

 心底不思議そうに首を傾げた虎珀に、頭を抱えながらあのぶっ飛んだ彼女、強いては水無瀬家の影響受けすぎだろと肩を落とした。

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