ヨルの探偵Ⅰ


 わかってる。普段ならこんな面倒な役回りもしないし、そもそも流石に俺ら全員で他人の家に押しかけるような真似はしない。

 おかしい理由はわかってる。

 あの、屋上での出来事が頭から離れないからだ。


「……ご飯、食べますか?」

「ん〜、じゃあいただいていこうかな〜。弟くんとも親睦を深めたいしね〜」

「朝陽でいいです。虎珀皿運ぶの手伝って」

「おっけー。お、今日炒飯じゃん!」


 キッチンにいる弟くんから声を掛けられて、思い出していたあの屋上での彼女の様子を頭から消す。

 自由奔放の姉と違って、弟くんこと朝陽くんはしっかり者。真逆な性格してんのに、どっかしら似てると思うのは姉弟だからか?

 なんて思いながら、運ばれてきた炒飯の匂いに釣られて、今まで爆睡決め込んでた恭も起きて全員でダイニングテーブルに向かう。

 そして、男だらけで食卓を囲み、短時間で作ったとは思えないクオリティーの炒飯を頬張った。


「……炒飯、口に合いますか?」

「美味しいよ。前のカレーも美味しかったけど、朝陽くんは料理上手だね」

「作らないと姉が何も食べずぶっ倒れるんで、仕方なくです」

「なにそれ……。生活能力皆無なの?」

「似たようなものです」


 月夜ちゃん、ま~じで?

 あの莉桜が心配通り越してドン引きしてるし、翔も恭も顰めっ面だし、優介なんて眉毛八の字なっちまったよ。ほんとにやべーよ。

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