ヨルの探偵Ⅰ
やっぱ謎だらけだわ〜、と分厚いベーコンを咀嚼しながら1週間前の出来事に思いを耽ける。
あの屋上で、俺たちは目の当たりにした。
彼女の本心の一欠片。
「────……知ってるよ」
諦め、哀愁、淋しさが詰まった、そんな音色。
どうしても頭から離れない。
幸せになれない、と負け惜しみのように言われたその言葉に酷く諦めた表情で、知っていると返した。
あの子なら笑い飛ばすだろうと、その先入観からだろうか、小骨が喉に引っかかるようにいつまでも忘れられずにいる。
そうして、1週間が経ってしまった。
「今日は会えると思ったのにな〜、まさか家にも帰ってないとか意外にも不良娘すぎるんじゃねぇの〜?」
「そうだね。それに、俺はちょっと心配だよ。色んな面で」
「まぁ、慣れです。大丈夫です、別に」
「慣れって……。朝陽も虎珀もまだ中学生じゃん」
心配性の兄属性の優介が心配するのはわかるけど、それにしても朝陽くんも虎珀も冷めている。
その様子に、呼び捨てで名前を呼ぶほど近くなった莉桜が不満げに言葉を漏らす。それでも、どこか一線引くように朝陽くんの表情は崩れない。
でも、なんだろうな〜。この違和感。