ヨルの探偵Ⅰ


 月夜ちゃんが朝陽くんにじゃれあうように構う場面を俺ら知ってるから、余計に気になって仕方ない。

 どうして、朝陽くんの方から距離を置いてるのか。

 だけど、どこまで入り込むか見誤ると全て水の泡となることは学んでるから、もうちょい時間が経ってから……と思ったところで爆弾。


「……寂しくないのか」


 その一言に、全員が目を丸くした。

 なんてことない様子で恭があっけらかんと朝陽くんに向かって言葉を掛けたけど、ぜってぇそれを聞くのは今じゃない。

 場の空気を直すように、恭を抑える。


「ちょっ、恭くんは少しは空気っての読もうな〜?」

「我慢してねぇで、心配なら探しに行けばいい」

「……別に、我慢してないです」

「そう見えないから言ってる」


 黙り込んでたくせに、急に饒舌になってズカズカと他人の領域に踏み入る恭は、まさに王様そのもの。

 なにしでかすか読めねぇわ、こんなん。

 お前の兄貴どうにかしろと無言の翔に目を向けてみたが、他人事のようにそっぽを向かれて意味はなかった。

 ただ、今まで表情を崩さなかった朝陽くんが年相応に顔を歪めたのを、恭は見逃さなかった。


「中学生が聞き分けのいいフリすんな」


 その言葉が決定打だった。

 虎珀が心配そうに朝陽くんを見て、少し驚いたように目を見張る。

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