ヨルの探偵Ⅰ


 カチャン、とスプーンを置く音が静かなこの状況で嫌にも響いた。


「もし、詮索して嫌われたら困る……。二度と帰ってきてくれないかもしれない」

「よるはそんな薄情な奴じゃないだろ」

「そうだけど、わかんないじゃないですか。昔は今よりトゲトゲして意味わかんなかったし……」

「……とげとげ」

「無視されたり、半径1m以内だと嫌がられたり、意味わかんない場所怪我してた」


 ……まってまって、ツッコミどころが多い。

 2人の会話をみんな黙って聞いてるけど、俺は気になるよ? なにトゲトゲって。無視とか距離感とか怪我とか、月夜ちゃんからは想像できない。

 それに、朝陽くんから本音引き出せたのはよかったけど、恭はなんでトゲトゲの方に興味持ってんの。

 違うでしょ。もっと聞くことあるよね? 朝陽くんが幼い口調になった今の内に色々聞いてよ頼むから!

 そんな俺の心情なんて露知らず、会話が終わってしまった。


「……いろっいろツッコミ要素あったけど、とりあえず月夜ちゃんの反抗期はえげつなかったってことでまとめて」

「反抗期っていうより、初対面の人間に警戒だらけの猫みたいな感じでした」

「なにそれなにそれ。え、初対面のなに? 猫?」

「……あぁ。俺と姉、血繋がってないんで」


 ……は?

 はぁ? はぁ〜〜〜〜〜!?!?

 ま、ちょ、意味わかんない! なにその爆弾発言! さらっと言わないで!? 血繋がってない!? 血繋がってないの!?!? え、うそじゃん!?

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