ヨルの探偵Ⅰ


 ニヤつく口元を隠すように、スプーンを運びながら恭に目を向ける。無表情で感情が分かりづらいが、考えてる事はわかる。

 気になるよねぇ? どこで何してるか。

 楽しくなりそうだと喉の奥で噛み殺すように、その衝動を抑える。

 すると、見計らったようにスマホが震えた。


「蒼依」

「ん〜? なぁに恭くん、そんな目で見んなよ照れちまうだろ〜が」

「……蒼依」

「ハイハイ、わかってんよ。無茶はしねぇよ〜」


 釘を刺してきた恭を交わしながら、届いた2通の文面を確認して、片方の厄介な方には短文で〈わかった〉とだけ返した。

 いつまで経っても、呪いのように纏まりついてくんだよなと自嘲しながら俺は運命を受け入れる。

 そして、もう1通。それはある手掛かりとなる内容で思わず緩む口元を手で押えた。


「ははっ。逃がさねぇよ、俺が捕まるまではな」


 時間とは無限。無限であり有限。

 わかってる。

 俺にもタイムリミットがあるから。


 さて、鬼ごっこだ。


end.


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