ヨルの探偵Ⅰ
そんなヘマするような奴がバックについていたとは到底思えない。徹底してるに決まってる。
クスリの仕入れはリスクが高い。つまり、何処かから買ってストーカー養護教諭に渡した。またそれも、本人じゃない。運び屋だ。
自分の手は汚さず。姿は現さず。誰かを動かして計画を遂行する。
心底、腹が立つ。
「……デ、なんでヨルはタツヒコのトコだって思ったノ?」
「黒羽組管轄で、クスリ売り捌くのは無理。この前一斉検挙されて他の組関係も大人しい。まぁ、残るは消去法で問題児だらけの龍彦のとこだろうって話」
「確かにネ〜、アソコは魔窟だしィ」
「言い得て妙。エリアが最近また分断されたからね」
うげぇ、と口直しのようにチョコを頬張ったマレくんに釣られるように私も甘味を口に運ぶ。思ったより甘ったるい。
ヤクザとかマフィアよりも彼処はタチが悪い。マレくんが魔窟だというのも頷ける。
知らずに彼処に踏み入って、五体満足で帰れる者はいない。寧ろ、彼処から無傷で帰れたらそれこそ勇者だ。奇跡だ。
「……ン? まって、まさかヨル、彼処行くノ? ジョーダンだよネ?」
「龍彦に協力してもらうから行くしかないでしょ、アンダーグラウンド」
「ウワァ、ボクお留守番ネ」
「はぁ〜? 自分だけ高みから見物するつもり?」
「モチローン。ボクは五体満足で帰れる保証ないケドヨルはダイジョーブでしょ! タツヒコのお気に入りだもんネ!」
二パァ! と花が咲いたように笑うマレくんに愛嬌振りまいて逃げる気だなと悟る。
まぁ、今回は見逃すけど。