ヨルの探偵Ⅰ
マレくんと龍彦は相性悪いもんね。煽り合う2人を脳内で再生しつつ、グラスの酒を飲み干してドアの方を振り返った。
「只今帰りました、ヨル」
「……ただいま」
「おかえりー。紗夜、夜白ありがとね、お疲れさま」
日中外で動いてくれた2人を迎え入れて、簡単に報告を聞く。
まぁ学校への後処理も周りへの後処理もほとんどしていたから、外に出て残りの足跡を消してもらうくらいだったけど。
帰宅した紗夜が、少し神妙な顔つきであの養護教諭について話し始めた。
「それが……どうやら彼の情報は操作されていたようで、私が纏めた資料は偽物だったようです」
「情報操作? バックはハッカー……じゃなくてクラッカー?」
「その線が濃厚です。それに、あの養護教諭は半年前まで彼女が居ましたが、どうやら不慮の事故で亡くなったらしく……。それから荒んだ生活だったようです」
「ウっワ、いかにも仕組まれまシタみたいなハナシ」
「……精神科の通院履歴もあった」
ビンゴだね。
とにかく、今回はしてやられた。厄介そうな相手だとは思っていたけど、まさかクラッカーとは。
紗夜もそこそこ機械に強いのに、偽の情報捕まされたってことは紗夜より格上。悔しそうに眉を寄せた紗夜の肩に頭を乗せながら、ふと考える。
どこまで知っているのか。