ヨルの探偵Ⅰ


 そんな危険地帯に出向くわけで、上手くいけば何日間か彼処に拘留させられる。言わば下界と切り離されるということだ。

 依頼の目星を付けるのはマレくんがしてくれるだろうし、情報も紗夜にお任せする。

 だから、私がすることは……。


「夜白〜、アンダーグラウンド行く前にそのもっさもさの見た目どうにかしよ〜」

「…………は?」

「黒ずくめすぎて目立つもん。女装しようよ、絶対似合うし」

「……ヨルの趣味じゃん、暇つぶしに遊ばれんのやだ」


 文句は聞かなーい!

 顔を顰めた夜白はほっといて、ウィッグや化粧をずらっとテーブルに並べた。

 そして、ふんふんと鼻歌を歌うマレくんが指さしたパープルのロングのウィッグをもさもさ真っ黒ヘアーの夜白に付ける。もちろん、化粧もする。

 完成して、出来上がったのは儚げ美少女。


「よ〜しっ! 完成! 上出来!」

「カワイイじゃん夜白! ボクの好みダ!」

「……マレの好みとか最悪」


 にまにまする私とマレくんとは対称的に、心底疲れて嫌そうな顔をする夜白。

 しかし、頑張ってもらうのはこれからだ。

 タイミングよく龍彦から連絡が来て、マレくんと紗夜に「いってきまー」と挨拶をし、嫌がる夜白の腕を引っ張りながらBARを出た。

 そのまま繁華街を通り抜ける。


「ふふー、夜白は女装似合うね」

「……うるさい。覚えてろよ、ヨル」

「夜白が怒っても怖くないよーだ」

「…………はぁ、もういい。で、どうすんの」


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