ヨルの探偵Ⅰ
本来なら地面で寝たこと、パーカーのチャックを頭まで閉めて通報されかねないこと、叱りつけたいところだが、今回ばかりは目を瞑る。
────夜の探偵屋。
そのワードを聞いた瞬間、何もかもが吹っ飛んだからだ。
「一歩前進か? ……まぁこのメモじゃ、前進したとは言い難いけどな」
縋るには、あまりに不安になるメモだ。
そう思ってしまうメモだが、これはさして重要ではないことはわかっていた。
王者の出で立ちで、俺らの王様が言う。
「メモは何とかする。あと女、絶対に見つけろ」
「仰せのままに。夜の探偵屋について知れるんなら何でもするさ」
俺らが執着する夜の探偵屋。
何がなんでも見つけたい。何を差し置いてでも、何を対価としても、夜の探偵屋に会う必要があるから。
だけど、夜の探偵屋について知ってることと言えば、誰でも知ってるような噂話だけ。
この数ヶ月、ずっと進展がなく滞っていたことがようやく動き出しそうだ。
じんわりと口元が上がり、それを見た恭も同じように微笑した。
まずは、
「不思議な女の子探しだね」
地の果てまで、どこまでも追う。
俺らと彼女の、序章の鬼ごっこの始まりだ。
end.