ヨルの探偵Ⅰ
そして、奥の部屋のベッドに雑に放り投げられた。ホワイトムスクの匂いに包まれて懐かしい気分になる。ヘビースモーカーのくせに、いい匂いなのムカつく。
甘ったるいお菓子の匂いのマレくんとはまた違った官能的な甘さに、ほんのり龍彦の吸う煙草の匂いが混じって、それが彼自身の匂いになる。
すぅー、と枕に顔を埋めていると、ぎしっとベッドが沈んだ。
ベッドの端で煙草を銜えてる龍彦の横顔を眺めながら衝動的に口を開いて、聞かれる前に先手を打つ。
「聞きたいのって、彼等のことでしょ」
「……わかってんなら話は早ェわ。おまえ、ソイツらと関わってから気ィ緩みすぎだ」
「わかってる。何だろうね、妙に気が緩みすぎる」
「悪いとは言わねェよ。ただ、標的にされたくねェなら距離感考えろ。……あと9割は嫉妬だ」
bsのことについて釘を刺してきたかと思えば、可愛いことを言う。
照れ隠しのように、煙草の火をジュっと消した龍彦の背中に指を這わせる。ツー……と肩甲骨から腰に向けて指を滑らせ悪戯のようにして遊んでいると、腕を掴まれた。
痛くないように掴まれた腕は離されることなく、龍彦がゆっくりこちらを向いた。
「可愛いね、龍彦」
「ンな有り得ねェこというの、テメェだけだわ」
知ってる。
その言葉が喉を通ることはなかった。