ヨルの探偵Ⅰ
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日が暮れて、暗くなった店内をラベンダーの香りがするキャンドルが照らす。
彼は、数時間前までいた彼女のことを思い出しながら甘いチョコレートを摘んだ。口の中に甘さが広がって、溶ける。
それも一瞬、ドアの開く音で意識がそちらに向いた。
「マレ、まだチョコレートを食べてたんですか。食べ過ぎです。糖尿になりますよ」
「知ってるヨ。あーあ、今頃ヨルは食べられちゃってるんだろうナ、オオカミに」
「……ヨルも夜白も大丈夫ですかね。心配です」
「ハァ、お口が寂しい。……紗夜、コッチきて」
心配そうに眉を下げた紗夜に、微塵も心配してない彼は、自分の側へと呼ぶ。
それに、何も疑うことなく紗夜が近付くと、手を伸ばすと捕まえられる距離になった刹那、思いっきり腕を引かれ唇が合わさった。
抵抗する間もなく、甘ったるいチョコレートの味が口に広がる。
「寂しい者同士、慰め合いっこシよ」
拒否権なんてあるわけもなく、チョコレートのキスが全身に降り注ぐ。
蠱惑な甘さが、月に溶けた。