ヨルの探偵Ⅰ
砕けたクラッカー
波乱の1日目が過ぎて、2日目の朝を通り過ぎ夕方。
「龍彦ぉ、私のお酒は〜?」
「ヨル、テメェ人を顎で使うンじゃねェよ」
「いいじゃ〜ん。今の今まで拘束されてた私は心身ともにくったくたなんですぅ」
「……テメェにやる酒はねェ」
「うっわ! ひっどい!」
横暴だ! とベッドの上でジタバタしながら、シャツを羽織った龍彦に文句を言う。
そもそもこの時間まで拘束する龍彦が悪い。マレくんたちとの定期連絡も怠ってしまった。夜白がやってくれてるとは思うけど、多分怒ってる。
でも、朝か夜かもわからないこの部屋で2人で過ごして、地下の雰囲気を思い出せたのはよかった。
ふと、サイドテーブルにあったスマホを手に取る。
「依頼はなしかぁ」
「なくてよかっただろーが。ソッチにかまけてる暇ねェだろ」
「いや、せっかくアンダーグラウンドにいるしさぁ」
面白い依頼が飛び込んでほしかった。なんてね。
そんなことを口にしたら龍彦の拳骨だけじゃすまないのはわかってる。だから言葉にしなかったのにデコピンをされたのは解せない。
じろっ、とジト目で龍彦を睨みながらスマホに入っていた恭からの1件の不在着信に胸がざわつく。他のbsからも連絡は来てたけど、恭のはこれだけ。
何だか掴みどころがないな、あの王様は。