ヨルの探偵Ⅰ
龍彦から奪った煙草を人差し指と中指に挟んで、口元に持っていく。
そのまま毒を吐き出して、重たい体を起こした。
「ねぇ、龍彦。分断されたエリアの元ボスって誰だったっけ?」
「元は夕霧のエリアだった。結構規模もデケェし、警察ともズブズブだったな」
「ふぅん、そのエリアが真っ二つにねぇ」
夕霧は男だ。頭もキレる、見た目も麗しい、金作るのが上手い。なんていい三点セット。
アンダーグラウンドは地上と不可侵とは言え、やはり警察やヤクザと仲良くしておいて損はない。持ちつ持たれつつのエリアも多い。
かくいう龍彦のエリアも、政府のお偉いさんやどっかのマフィアさんたちと仲良しである。
そんな警察ともズブズブの仲で、エリアからも認められてた夕霧が突如姿を消した。ここでは、消えたボスや仲間を追うことはしない。
だから、まぁ、夕霧の居所を探るのは難しい。
「それが問題なんだよなぁ」
なにもかもが、出来すぎている。違和感がないのがおかしい。
此処では人が消えても探さない。そんな場所で、慕われていただろう夕霧が突如消えた。だが、暗黙のルールの元に探されない。
そして夕霧のいないエリアは分断された。規模のデカかったエリアを真っ二つにして、ひとつは夕霧が可愛がってた男が夕霧のエリアをそのまま再現している。
他は、新しい女のボスが来て、新エリアにしたとのこと。何とも怪しい。
「点と点だなぁ。ふざけたクラッカーだ」