ヨルの探偵Ⅰ
おつまみとやらに置いてったクラッカーのお菓子をバリッと潰す。ポロポロと床に落ちたが気にしない。あとで龍彦が掃除してくれる。
それにしても、キーワードが多い。まずは合成ドラック。消えた夕霧。新エリアの女ボス。バックのクラッカー。
「ん〜〜〜〜〜!」
「唸ってんじゃねェよ、うるせェ。あとクラッカー零すな」
「あ、おかえり龍彦……と夜白」
「……服着ろバカヨル」
おっとおっと、ごめんごめん。
絶対零度の視線を向けてくる夜白に、1ミリも申し訳なさそうに横にあった龍彦のTシャツをワンピースのように着る。デカイな~。
兎にも角にも、当初とやることは変わらない。目的は同じ。
部屋を出て黒の革張りソファーになんの躊躇もなく座る夜白の横に腰を下ろす。そして、龍彦に頼んでおいたものを受け取った。
「……なにそれ」
「ア? アンダーグラウンドの見取り図だ。ほんとお前ら、俺に感謝しろ」
「してるしてる。最高、ありがとう龍彦」
バサッとテーブルに広げられたのは、このアンダーグラウンドの見取り図。しかも、どこがどこの地上に繋がってるかも描かれてる。
こんなの持ってるのは大規模エリアのボスの龍彦くらいしかいない。
ふんふん、と見取り図をコピーするように暗記していく。
元夕霧のエリアは……なるほどね。
「夜白、このエリアの一帯は暗記して。明日にでも潜入させるから」
「……わかった」
「この潜入は、夜白が適任だから任せるけど無茶はしなくていいよ。脱出ポッドは既に抑えてる」
「くれぐれも言っとくけど、戦争は起こすなよ」
「もっちろ~ん」
指で輪っかを作って龍彦にウインクすると、煙草の煙吹きかけられた。
ふーん、気にしないもん。