ヨルの探偵Ⅰ
夜白を潜入させて一日が経った。
めぼしい情報はまだ入ってこない。イヤホンを片っぽ外し、焦りは禁物だと自分に言い聞かせながら、設置した盗聴器から永遠と流れるEDMに肩を落とす。
口に銜えた小型のライトを落とさないように留意しながら、パソコンの文字列と睨めっこをする。
「また厄介なトラップ仕掛けやがってぇ……」
本来なら紗夜に丸投げする機器系統を何で私が試行錯誤しながらやってるかというと、理由は簡単。
ここがアンダーグラウンドだからだ。
無駄に天才が集ったこの場所は独自のIT技術が発展している。外部からの完全な隔離を目的として、セキュリティーが異常なのであーる。
仕方なく私が足を運んでいるわけだが、既にもう帰りたい。
多分そう思ってるのは私だけでなく、私以上に夜白が思ってることだろうけど。
「直接セキュリティーの核のエリアまで足運んだのに、厄介さは変わんないじゃん」
これ以上は持ち帰って何とかしようと、パソコンを閉じて迅速に場を離れる。
そして通気口のダクトを通って、もう一人の協力者の元にダイブした。
軽々と受け止めてくれたのは、今回の依頼人こと夕霧が可愛がってた元夕霧エリアの代理ボスだ。
「ただいまぁ、朝霧」
「おかえりなさい、ヨルさん。どうでした?」
「完全には無理だったー。でもいくつかのデータ引っこ抜いてきたし、逆にトラップ仕掛けてきたー」
「凄いですね」
「上手くいくかはわかんないけどね」
ピョンと朝霧の腕から降り、埃を払った。背中の埃を払ってくれた朝霧にお礼を言いながら、改めて話し合おうとコの字のソファーに座る。