ヨルの探偵Ⅰ
「……うっそぉ、鈍いなぁ」
「間抜けな女だな。金庫開けっぱかよ」
「暗証番号もずっと変えてない……」
「有り得ねェな。見ろこの夜白の顔、呆れてる」
思いの外、蘭という女は警戒のない女だった。監視カメラのハッキングも盗聴にも気づかない。
ポリポリとお菓子を頬張りながら、龍彦と監視カメラ鑑賞会をかれこれ2時間も続けている。その間、あまりの蘭という女の抜けっぷりに脱帽していたところだった。
これならもっと大胆に動いてもバレなそうだ。なんて思いながら夜白と朝霧からの連絡を待つ。
「いくらアンダーグラウンドが無法地帯だからって無防備すぎだろこの女」
「ね、人の出入りも多いから頼んだ盗聴器も簡単に付けれたし」
「これならすぐしっぽ出すだろ」
「うん、もうちょっと泳がせて待ってみる」
拍子抜けとはこのこと。監視カメラをハッキングした時点で、あのクラッカーに気づかれるかと思ったけど音沙汰なく。
ふと、思った。クラッカーは別にあの女の味方をしている訳ではないと。
もうこの女にこだわる必要はないのだけど、夕霧のこともある。それにクラッカーも誘き出したい。
監視カメラを遡った時、一部途切れてる映像もあったし、エリアの見取り図からしてあるはずの部屋がいくつか使われず、機能していない。
しかもそこだけ厳重にセキュリティーが強化されてて、わかりやすさにお茶を吹き出した。
「何があるのかな、お宝かな」
「すっとぼけんな、合成ドラックだろ」
「まぁね。あの男子生徒もこっちで買収したし」