ヨルの探偵Ⅰ
説明なんて聞いてないだろう住人に向けて、論説をするように割れたボトルの瓶をマイク代わりに持つ。
「この女は、合成ドラックのブローカー。元は地上で捌いていたけど、規制が厳しく一斉検挙されてたからは、身の安全のためにアンダーグラウンドに身を隠そうとした」
「な、っ、それの何が悪いのよ」
「そうだね、そこまでは悪くない。でも夕霧に手を出したのはまずかったね」
ニコッ、と笑顔でそう言うと察したのか口を噤んだ。
そう。ここでようやく夕霧の消えた事件に辿り着く。この女は元アンダーグラウンドの住人なのは本当だった。でもそれも一瞬。ボスと反りが合わず、地上に出たのだ。
そして、他国と自国を繋ぐブローカーの役割をしていた。合成ドラックにヤク、色々なものを仲介していた。
そこまでは良かった。
しかし、この前の黒羽組元若頭の件があって一斉検挙されてたから地上で動きにくくなった。そのため地下に潜ろうとしたが、厄介なことが1つあった。
「夕霧のバックに黒羽組がいるって知って、まずいと思ったんでしょ? ……あの元若頭に仲介してたのは貴女だから」
「何よ、悪い?」
「うん、悪くない。でも運が悪かった。夕霧は黒羽組の組長さんに言われて、出処を探ってた。貴女が捕まるのも時間の問題。だから、夕霧を陥れた」
なんとまぁ、繋がる話だ。
あの私たちが動いた黒羽組の件で、夕霧も動いていたのだ。朝霧に黙って動いていたのはその件だ。