ヨルの探偵Ⅰ
それに、夕霧が生きてることも確信していた。
夕霧が消えて殺されていたのなら、必ず何か足跡があったはず。なのに何も見つからなかった。でもそれも時間の問題。
何処にいるのかと思ったけど、まさかの灯台もと暗し。それならば確実に生きていると思った。死体は臭うからね。
「それにしても、夜白の言う通り喰えない女だったねぇ。あの女は」
「えぇ、私が直接手を下したかったのに」
「物騒だな、お前。相変わらず、夕霧バカだわ」
「ふふ、それは褒め言葉ですよ」
いや、まじで物騒。
龍彦も夜白もドン引きしてんじゃん。もちろん私もしてるけど。
珈琲をずーっと啜りながら、ふとあの女が言っていたことを反芻する。あの言葉が本当なら、手のひらにいたのは私たちだ。
「はぁ〜、だとしたらもう逃げられてるよなぁ」
「……あの女の? 負け惜しみじゃなくて?」
「いやぁ、あれは違うでしょ」
もういる。
その言葉が正しければ、クラッカーは高みの見物をしていたのではない。いたのだ、此処に。
きっと、あの女の自爆で起きた混乱に乗じて逃げている。今更捕まえようにも遅い。