ヨルの探偵Ⅰ


 焦燥感のある顔つきでやってきたのは、龍彦のエリアの子だ。

 まだ幼い顔に似合わず、爆弾作りが趣味で何度もボヤ騒ぎを起こした問題児なのだが、ただ事ではない様子に龍彦の顔が険しくなった。


「いない、いなくなってる!」

「何がだ」

「────いないんだよ! 拷問部屋にいたやつが! 消えてるっ!」


 その言葉に、また背筋が凍ったような気がした。

 龍彦が怪訝な顔で言いに来た子どもに詰め寄ってるが、私も夜白もただただおかしな事態に固まってしまう。

 龍彦のエリアに行こうと、察した朝霧に目だけで合図して部屋を出た。走って向かう途中に事の成り行きを聞く。


「死んじゃってっかなって様子見に行ったら、いなかったんだよ! 探したけど見つかんねぇし、そもそもあの部屋から1人で逃げるなんてむりだろ!」

「どうやって逃げたんだクソ野郎、内通者でもいたか」

「……もし部屋から逃げても、ここを出るのは無理がある。つまり、まだいる」


 慌ててる様子の子どもに、静かにキレてる龍彦、無表情のまま冷静に考えてる夜白。

 まだ走れない私は龍彦に抱えられているが、この異常事態に最悪の予想をしてしまっていた。有り得ないと思いながらも、その考えが離れない。

 そうしているうちに、龍彦のエリア。拷問部屋に着いた。

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