ヨルの探偵Ⅰ


 だから朝陽たちもゆっくり朝ごはん食べてたのかと他人事のように納得する。とてとてと問題集を持ってやってきた可愛い弟に、私は首を傾げた。


「……来週から期末だから、勉強教えてほしい」

「いいよー。虎珀くんも?」

「わかんねーとこは聞くー!」

「了解。じゃあリビングでしよっか」


 自堕落に耽ってるリビングのドデカい彼らをむりやり退かし、可愛い弟たちと輪になりながら勉強を始めようとしたとこで、私はまた思い出す。

 アンダーグラウンドにいたから日にちの感覚とかなくなってたけど、私たち高校生組も夏休み入る前に定期考査なかったっけ……? と。


「まじ〜? 虎珀も勉強とかすんの〜、偉いね? よしよし〜」

「蒼兄もしたら? 留年したんでしょ?」

「……月夜ちゃん教えてください」

「おれも」

「いや、2人とも3年じゃん。私、2年生なんだけど」


 蒼依くんに便乗するように恭も教えてと言ってきたけど、どう考えても後輩の私に頼むのは間違い。

 そこにいる頭良さそうな優介くんとか莉桜くんに頼み込めばと言う前に、莉桜くんは「むり」とソファーに足を組んで座ったし、翔くんも本を読み始めた。

 私はその時、気づくべきだったんだと思う。

 苦笑いの優介くんに「一緒に教えてくれる?」と言われ渋々頷いてしまったのが、──間違いだった。

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