ヨルの探偵Ⅰ
哀れみの込めた目で見てきた莉桜くんの表情が今ならわかる。
これなら小学生に教える方が簡単だ。むしろ今まで進級できたことが奇跡と思えるレベルで、酷い。過去問が真っ白、もしくは間違いだらけだ。
「恭と蒼依くんより年下の莉桜くんと翔くんの方が頭良くて勉強できるって何事……? なんなら朝陽の方が頭いいよ」
「俺、数学とか呪文に聴こえて眠くなるのよ〜」
「わかんねぇとこが、わかんねぇ」
「……怒るのも教えるのも殴るのも疲れた。ほんと優介くん、今までおつかれ」
「ははっ、もう慣れたよ」
苦労人の優介くんは、よっぽど根気強くこれまで教えてきたのだろう。尊敬する。私は無理。
翔くんの膝で休憩してたけど、今日1日を使って何とか赤点阻止だけはさせないと優介くんが過労死してしまう。
気合いじゃっ! と私は腕まくりして、時間がないからヤマを張り、絶対に出る部分だけを完全に暗記させようと必死になった。
「つか、月夜ちゃんめちゃくちゃ勉強できんのね〜」
「なに? その意外〜みたいな顔」
「だってさ〜、勉強とかめんどいっていいそうなタイプじゃん」
ペン回しをしながらそう言う蒼依くんに、探ってくるのが下手だなと思いながら、反対に真面目に勉強してる朝陽と虎珀くんに目を向ける。