ヨルの探偵Ⅰ


 その問い掛けに、思わず視線を上げた。

 キラリとブロンズの髪が太陽に透けて揺れる。思ったより真剣な目をしていた翔くんはどこか怒ってるようにも見えて、また言葉に詰まった。

 ほんと、今日は良くない。そもそも睡眠不足と疲労で頭が碌に回ってない。


「……翔くんから欲しいものはないし、してほしいこともない」

「欲しいもんはあるんだな」

「そうとは言ってないけど、そうとも言うね」


 駄目だ。ペースに乗せられる。

 口が滑ったと後悔しながら、次に言葉を発する前にコンビニに着いた。

 会話が途切れてことに安堵しつつ、モヤモヤが晴れない。

 コンビニでバニラのアイスを選んでカゴに入れ、少し気まずくなってしまった空気を入れ替えるように話題を振る。


「ねぇ、翔くん。駅前にジェラートの専門店できたんだって。甘いもの好き?」

「そこそこ好き」

「じゃあデートがてら行こうよ、今度」

「…………デート?」


 駅前なんて2人でいたら目立つかもしれないけど、線引きしすぎるのもつまらない。それに、私は彼等といるのに居心地が良さを感じていた。

 でも、デートという単語はまずかったかな。固まった翔くんの顔を背伸びして覗き込む。少し頬っぺが赤い。


「2人で?」

「うん、テスト終わって夏休み入る前に行こ。それともみんな誘う?」

「いや、2人がいい」


 そう言い切った翔くんが、どことなく照れてるように見えて可愛かった。

 朝陽も可愛いけど、また違った可愛さ。やっぱり後輩だからかな。母性が芽生えそう。

 空気が柔んで、機嫌が直った翔くんと2人、太陽に照らされ来た道を戻った。

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