ヨルの探偵Ⅰ


 話が中断され、「あぁ」「わかった」と何度か相槌をして通話を切った恭に視線が向く。

 何かあったか聞きたいが、ここには朝陽くんも虎珀もいる。もしbsに関わんなら、ここで公に話すことはできない。

 どうすっかな、と頭を回していると、急に立ち上がった恭が俺を指名してからリビングを出た。

 「恭ちゃんと秘密の逢引してくんね」と冗談を言ってから、リビングを出て、壁に背をつけてポケットに手を突っ込んでる恭に何があったかを聞く。


「……針生が消えたらしい」

「はあ? 針生って、あの中立の針生? どこ情報なわけ?」

「アイツが通ってたクラブのオーナー。顔みてえねえって」


 恭から教えてもらった内容にいくつか引っかかる。

 まずbsは敵が多い。無駄に目の敵にされていて、喧嘩を吹っ掛けられることも度々。そんな中で中立の針生は珍しかった。

 敵にも味方にもならず、ノリは良く、頭もキレて面白い。そんな針生はよくクラブに通っていて、そこでも好かれていた。

 そんな針生が、消えた?


「消えたって確証はあんの?」

「消える前日に明日も来ると言ったが来なかった。学校にも来てない。秀才で学校じゃ真面目な針生が、テストすっぽかすか?」

「それで消えたって? 確かにアイツは約束破るようなやつじゃねぇけどさ〜」

「……それと、消える前、夜の探偵屋に依頼すると言ってたらしい」


 ピタリ、俺の動きが止まった。

 ようやく恭の言いたいことがわかった。まだ姿を消して1週間。探るのには充分だ。


「……ちょっくら、人探ししますか〜」


 ニッ、不気味なくらい綺麗な笑みが浮かんだ。


end.

< 199 / 538 >

この作品をシェア

pagetop