ヨルの探偵Ⅰ


「月夜ちゃん。ね、一旦落ち着こう? 話をしよう」

「優介くんでもやだー。反省してくださーい」

「じゃあ僕は? 僕、定期考査1位で満点だったんだけど?」

「ええ……すごいねおめでとう」


 一向に相手にされない。目も合わない。

 このままじゃ本気で何も教えてもらえないかもしれないと焦った蒼依は、暴挙に出た。

 駅前に向かおうとしていた彼女の前に立って、通せんぼと言わんばかりに両手を広げて足止めをした。

 いくら平日の日中でもそこそこ人はいる。こんな目立つことできればしないでほしい。莉桜も顔を顰めて蒼依を見た。


「蒼依めんどくせぇな。俺と月夜これからデートだからどっかいって」

「そうだよー。暑いからジェラート食べに行くのー」

「ジェラートはまた今度にして、そこの喫茶店でみんなでお茶しようじゃねぇの? な?」

「地の果てまで追ってきそうだな、もう〜」


 蒼依の目立つ行動が嫌だったのか、翔と月夜ちゃんは顔を見合わせてアイコンタクトをした後、仕方なさげに「わかったよー」と喫茶店の方へ足の向きを変えた。

 この時ばかりは蒼依に感謝した。

 小さな木造の喫茶店の中に入り、老夫婦の店員に席に案内される。

 奥の席に座り、翔と月夜ちゃんがかき氷をシェアしようと頼んだとこで、話に移った。


「まず、なんで知ってたのかな? 月夜ちゃんは」

「あ、かき氷きた。翔くん食べよ」

「なにこのバカップルみたいな2人。僕こんなの見たくないんだけど」

「せっかちだなぁ、みんな。翔くんから聞けば?」


 そりゃあ、立場が逆転した今では悠々とはしていられない。

 確実に翔と月夜ちゃんの方が、何かを知っている。

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