ヨルの探偵Ⅰ


 翔も何か知ってたのか、と顔を向けると心底面倒くさそうにため息をつかれた後、ゆっくり話し始めた。


「針生、もう日本いねぇ」

「「……は?」」

「え、どういうこと? 日本いない?」


 探していた人物が日本にいないと言われ、思わず気が動転した。

 いや、もし日本にいないとして何でそれを翔が知ってる? 俺らが何か見落としていたのか? ここ数日のことを思い出そうとするもわからない。

 どういうことかと莉桜が翔に尋ねると、イチゴ味のかき氷を掬って食べた月夜ちゃんが口を開いた。


「ビールとかソーセージ、美味しいよね~」

「え、急になに」

「ジャーマンポテトもシュトーレンも」

「……月夜、ドイツ行きたいの?」

「あ、ピンポン! 答えが出たね」

「…………ん? は? まさかだけど、針生……今ドイツいんの?」


 ハッ、と顔を上げた。

 それで、ようやく自分たちがどれだけ無意味で無駄なことをしていたのか自覚して、急に力が抜けた。

 隣で気づいた莉桜も「あ……」と小さく声を漏らしていて、それを見ていた翔が答え合わせのするように口を開いた。


「なんで誰も針生の部屋、見に行ってねぇの? 引き払われて学校も休学。誰かに何かされたってより、自分からいなくなったって思う方が普通だろ」


 俺らは、電話口で言われた内容を信じすぎた。

 その事実が、あまりにも滑稽で恥ずかしい。月夜ちゃんが呆れるのも無理はない。

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