ヨルの探偵Ⅰ
つい数日前、月夜ちゃんが「無駄なのに。勉強したら?」と言ってきたことが忠告だったことに気づく。
本当に無駄だった。時間も労力も。
「これに懲りたら、ちょっとは慎重になりなね〜」
「肝に銘じとくよ」
「それと蒼依くん、そんなぷんすかしないで。テレビ見なよ」
「腹立つでしょ〜よ、騙されてんだから……テレビ?」
気が立っていた蒼依も、無意味なはずがない月夜ちゃんの言葉に顔を上げた。彼女が指差す方向にはテレビがあって、ニュースが流れている。
ある金融企業の賄賂の事件だ。関わっていた人物の名前が挙げられている。
そして、何人か手錠を掛けられてパトカーに乗る姿も映っていて、頭をよぎったある想像に背筋が凍った。
「……あれ、優介くんわかった?」
「は? このニュースで何がわかるわけよ〜」
「まって、僕、これ口にしたらまずい気がする」
莉桜も同じことを脳裏がよぎったはずだ。
ふと、作り物みたいに綺麗に笑った月夜ちゃんが視界に入って、言葉を絞り出す。
「この捕まった人、プライドの高い短気で女を見下す見栄っ張りな結婚相手の男とか……言わないよね?」
ぺろり、真っ赤な舌で唇を舐めた彼女が囁いた。
────正解だよ、と。