ヨルの探偵Ⅰ
見えない傷痕
────夏休み。
それは、学生にとって最も長い休みの期間だ。
「夏祭り、屋台、花火、海」
「?」
「夏っていって想像するものは?」
「……なるほどな」
屋上の日陰で、今日も翔くんと2人。
朝から終業式をサボって屋上にきたら予感的中。当たり前のように翔くんがいて、体育館で先生たちの声が響く中、そよそよと私たちは風に吹かれて涼んでいた。
でもいくら日陰で風があるとはいえ、気温自体が高い。しぬほど暑い。
「もう帰っちゃう?」
「一理ある」
「だよね。アイス帰って帰ろ」
立ち上がった翔くんに続いて、私も立つ。暑さで目眩がしそうだ。
課題や必要な書類は朝に配られたから帰ってもいいはずと言い訳をして、足早に屋上を後にして校門に向かう。
靴を履き替えていると丁度よく途中居合わせた優介くんと莉桜くんと合流したので、一緒に学校の敷地を出た。
「2人もサボり?」
「こんな暑い中、体育館に密集するのは愚行でしょ」
「俺も暑いのは苦手だからさ」
「まぁ、今日は終業式だけだもんね」
相変わらず口の悪いキレッキレの莉桜くんに、苦笑いの優介くん。どちらも暑さには弱いらしい。
太陽の光を浴びて翔くんも莉桜くんもぐったりしてる。なるべく日陰を歩きたいけど、向かうコンビニまで日陰がない。
この道がコンビニまでの最短距離だから、近さを選んで歩いていたけど……。
「暑い、溶ける。無理」
「やばいよ優介くん! 莉桜くんが限界だ!」
「少し早足で行こうか。莉桜、耐えてくれ」
「うん! 急ご! ……ところで赤点コンビは?」
「補習だろ」
とっても平和だなと思っていたら、蒼依くんと恭は補習らしい。あの赤点コンビは自業自得だ。
もう今にも倒れそうな莉桜くんにエールを送りながらあとコンビニまで僅かな距離、問題は起きた。
ぴたり、全員の足が揃って止まった。