ヨルの探偵Ⅰ


 今にも火蓋が切られそうな状況。油を注いだのはまた莉桜くんの一言だった。


「弱いのがいくら集まっても同じ、僕たちには勝てないよ」


 紛れもない事実だったのだろう。平然と言った莉桜くんの言葉に、相手の不良の顔が怒りでカッと赤くなった。

 そして、その言葉が決定打だった。

 ブンっ、とバットが振り上がって莉桜くんに真っ直ぐ落ちる様子が目に入る。

 しかし、その衝撃が届くことはなかった。


「──カハッ!」

「俺の幼馴染に、手を出さないでくれるかな」


 逆上した相手の不良がバットを振り上げるが、すかさず優介くんが懐に蹴りを入れ、男は吹っ飛んだ。

 今にもバットで殴られそうになってたはずの莉桜くんも、どこからか奪った鉄パイプで相手を薙ぎ倒していて力の差は圧倒的。

 初めて彼等の喧嘩を目の当たりにした。


「あの温厚な優介くんに、莉桜くんが……」

「怖いか? 隠れてろ」

「怖くはないよ。ちょっとびっくりしてるだけ」

「この数なら、俺らだけでも余裕だ」


 私の存在がネックだと思ったけど、案外そうでもなかったらしい。

 次々に相手を伸す2人を見ると、本当に余裕だったのかもしれないと感じる。

 しかし、油断は大敵だ。

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