ヨルの探偵Ⅰ
ぺろっと唇を舐めた官能的な仙波 蒼依に、仕草は心を映す鏡だなと思う。強い関心の表れ。それが身を滅ぼすというのに。
「つい最近、その同業者が同時に経営困難で潰れたらしいんです。まるで、何か見計らったように同時に」
「へぇ〜。まさかその同業者は夜の探偵屋に潰されちゃったって言いたいの?」
「そりゃあ、そう考えません? お金に執着しない夜の探偵屋が潰すまでするなんて、何かを知ったから行動に移したと思うのが一般的な考えじゃないですか」
「確かに、そうだねえ」
誘導するように、ゆっくり話を進めていけば物分りのいい仙波 蒼依は、なるほどと笑って言って口元に手を当てた。
けど、どれだけ利口で話の意図がわかったつもりでも私の前では愚直だよ。
さてさて、ここからがゲームの本題。
私の次の言葉を待つ仙波 蒼依に、しっかりと視線を合わせた。
「夜の探偵屋を闇雲に探すより、その同業者さん探す方が確実で手っ取り早い。なのでその同業者を探し出すゲームです」
「イイねぇ、そのゲーム。そそるじゃねぇの。……でも君にメリットは?」
「ありますよ、メリットは勿論」
へらり、息をするように口から嘘が出る。
声に揺らぎは一切ない。仙波 蒼依の目を見て、笑顔のままもう一度、嘘をついた。
「実は、私の父が、その同業者さんに間違った情報を渡されて大変だったんですよ」
オヨヨ、なんてふざけた演技で額に手を当てて困ったふりをすれば、仙波蒼依は「あちゃあ」と微塵も思ってないようなセリフを吐く。
うそに決まってるー。