ヨルの探偵Ⅰ
冷房が効いたこの部屋で、話を切り出したのは意外にも翔だった。
「んな気になんなら、本人に聞けばいいんじゃねぇの」
「うまく躱されそうな予感しかしねぇよ〜」
「それはそうだろ。好奇心と興味しかねぇ奴にペラペラ話さねぇよ」
「……翔、それは俺に喧嘩売ってると捉えっけど?」
翔の飄々とした言動に、怒りの沸点が下がる。
思わず胸ぐらを掴もうとしたところで、優介に宥められて腰を落ち着けた。冷静な翔と莉桜の視線が突き刺さる。
わかってる。腹が立ったのは図星だからだ。
理解してる。俺と優介、莉桜と翔には違いがある。恭はわからないが、決定的な違いだ。頭では理解していても、どうしようもないのだ。
彼女と向き合ってるか、否か。
「……わかってんだけどな〜、時間が惜しいのよ」
「蒼依、それは」
「あの子は不思議だろ。人脈も、過去も、考えも、訳わかんねぇのよ。なんかが違ぇの」
これまで会った誰とも違う。
ソファーの背凭れに体重を預け、天井を見上げた。そして、過去を振り返るように目を瞑った。
どうしよもない、しょうもない俺の気持ちごと掬ってった。無条件の優しさをくれた。いつか、恩返しをしよと思っていたのに。
……ソッチにいくには、まだ早ぇだろ。