ヨルの探偵Ⅰ


 パッ、と勢いよく目を開けた。

 過去に浸るのは悪い癖だなと自嘲しながら、口元に手を当てて考え込む様子の優介に視線を向ける。


「確かに、単なる女子高生ではないよな。何にも染ってない無垢な少女にも見えるのに、時々ゾッとするくらい目が暗くなる」

「……優介、そんな風に思ってたんだ」

「ちょっとね、気になってた。朝陽くんに向ける目もね」


 優介も気付いていたらしい。注意深く見ていればわかることだ。

 苦笑いで眉を下げた優介も、少なからずあの子を気に掛けてるらしい。あの子を見ていると、不安や心配で捕まえておきたくなる。

 そんなことを、ここにいる全員が思っているんだったら笑えるじゃねぇの。

 この短期間で、随分絆された。


「月夜ちゃん帰ってきたら、腹割ってお話でもしようかね〜」

「僕、嫌がるに一票」

「右に同意」

「あ〜? 辛辣じゃねぇの2人とも、ちょ〜っと月夜ちゃんと仲良いからって調子乗ってんじゃねぇよ〜」

「コラコラ、やめろってば」


 俺らに入っていた亀裂が逆再生のように、直っていくような気がした。

 自然と笑えていた自分に、多少驚きながらあの子が帰ってくるまで何を話すか考えよう。そう思っていた。

 ……思っていた筈なのに。

< 255 / 538 >

この作品をシェア

pagetop