ヨルの探偵Ⅰ



「どうしたんだ?」

「わかんねぇよ。この状態じゃ聞けねぇし、最初から様子はおかしかったな」

「そっか。とにかく落ち着かせよう」

「ねぇ、朝陽たちに連絡入れた方いいのかな」


 莉桜が不安げに優介に聞いたが、落ち着くまで一旦待とうという結論に至った。

 震える背中を擦りながら、改めて小さいと思う。持ち上げた時も軽かった。そんな彼女が、何か押し殺すように口元に手を当てて、震えていた。

 なにかがあった。不安が頭を占める。

 優介も莉桜も、困惑と不安で落ち着きがない。そんな中、静かに翔が足元にしゃがんで月夜ちゃんの手を握った。

 その行動に、優介も莉桜も自然と視線を向ける。


「月夜、どうした?」

「──……い」

「ん?」


 翔が優しさの籠った声で、彼女に問う。それに震えながらもなにか小さく答えた彼女に、俺らは耳を澄ませた。

 震える声で、横にいる彼女が言葉を紡ぐ。


「────こわい」


 その一言に、全てが詰まっている気がした。

 優介も莉桜も、横にいた俺も、言葉を飲んだ。弱々しく呟いたその言葉に心がざわつく。

 それとは対照的に、翔は真っ直ぐ彼女に目を向けた。


「何が怖い? 怖いことされたか?」

「……いなく、なるのが、こわい」

「俺はいなくなんねぇよ、傍にいる。それでも怖いか?」

「……わたしのて、はなさないで」

「わかった。離さねぇよ」


 小さな子どものような話し方だった。


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