ヨルの探偵Ⅰ
安心させるようにギュッと彼女の手を握った翔に、俺も心の中で少し安堵する。震える声が泣きそうだったなと頭の片隅で思った。
会話が終わってすぐ、支えていた身体が少し重くなり彼女から小さな寝息が聞こえてくる。
その様子に、優介も莉桜も、肩に凭れた彼女を支える俺も、深く酸素を吐き出した。
顔色の悪い彼女をゆっくりとベットに寝かせる。小さな寝息が聞こえて気が抜けた。手を繋いだまま離さない翔は、ベットの端に座って彼女の頭を撫でている。
その姿に、多少の違和感を感じたが、優介の声ですぐに消えた。
「……びっくりしたね」
「うん。最近顔色悪かったし、余計に心配」
「そうだな。何かなきゃ、あんな風にならないしな」
「腹割って話すって決めて、これかよ〜」
「まぁまぁ。起きてから大丈夫そうだったら話そう」
こんなに部屋に集まってたら月夜ちゃんも安眠できないから出よう、と提案した優介に莉桜が頷く。
そして、ベットの端に座る翔に優介が声を掛けた。
「翔、月夜ちゃん頼むな」
「言われなくても。起きたら呼ぶ」
「あぁ、わかった」
こちらを一瞥することもなく答えた翔。
相変わらず無表情で、月夜ちゃんが倒れた時は目を見張っていたが、今はもう何を考えているかわからない。
莉桜が心配そうに彼女に近付いて、頭を撫でた後、部屋を出る。
俺も後に続くように、部屋を出てパタンとドアを閉めた。
自分でもわからない虚しさだけが、残った。
end.