ヨルの探偵Ⅰ


 急速に、意識が覚醒した。

 繋がれた左の体温が、馴染む。目が痛くて夢が覚めたみたいだ。繋がれてないもう片方の手で瞼を擦る。


「……いたっ、暗いし……」


 異物感のある目を擦りながら言葉を漏らす。ふと繋がれた手の行方を追うと、ブロンズの髪が月明かりに照らされていて心が安らいだ。

 ベットの端で座ったまま寝てる翔くんを見て、一連の出来事を思い出す。

 やらかした。失態だ。


「ん、月夜?」

「翔くん、おはよう」

「目覚めたか。具合は? 大丈夫か?」

「平気、心配かけてごめんね」


 寝起きの翔くんは、私の姿を目にするなり頬に手を当てて心配そうな声を出す。

 月明かりしかないこの部屋で和やかな空気が流れ、視線が重なるのを無意識に避けるように翔くんの肩に頭を乗せた。


「水飲む?」

「いい。みんなは?」

「下で寝てる」


 まあ、いるよね。そりゃ。

 嘘だと思いたいけど、全て記憶に残っている。頭をトンカチで殴って忘れさせてほしいけど、そうもいかない。

 すりっと猫のように甘えてみると「寝る?」と耳元で翔くんの声が掠る。

 何も聞いてこないのは配慮なのか。タイミングを窺っているのか。

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