ヨルの探偵Ⅰ
────猛暑日。
真っ黒のサングラスを掛け、太陽に手を透かした。そして、手の間を通り抜ける日差しに目を細め、前を歩く2人に抗議する。
「……蒼依くんも莉桜くんも、もっとゆっくり歩いてよ」
「遅い。僕が手引っ張ってあげるから、ほら」
「お〜? このショップ良さげじゃねぇの、入ろ〜」
莉桜くんの優しさが染みるなぁ。
近頃甘々な莉桜くんに絆されながら、ふらふら店の中に入っていった自由な蒼依くんの後を追う。
私たちがいるのは、有名ブランドのショップが数々立ち並ぶ大型ショッピングモール。
とある理由からこの暑さの中、わざわざショッピングモールまで足を運んだわけだが、当たり前だけど夏休み真っ最中人が多い。人の熱気で溶けそうだ。
くらくらする頭を押さえながら、クーラーの効いた店内に入って蒼依くんの持つ黒ビキニに目を向けた。
「黒ビキニなんて着ないけど」
「えぇ、絶対似合うから〜」
「やだ。そもそもなんでこんなバカ暑い日にショッピング……」
「あん? そりゃ明後日海行くからだろ」
蒼依くんの持つ黒ビキニを戻しながら、ケロッと言った青色頭の男に殴りたい衝動を抑える。
この発端は、鼻歌で気分上昇中の蒼依くんの一言から始まった。
「明後日海行くから、今から出掛けま〜す」
その言葉に驚いて固まってる内に、有無を言わさず外に連れ出されたわけだ。
私が怒るのも当然だと思う。