ヨルの探偵Ⅰ


 しかし、怒る気力も体力も暑さのせいで消え失せた。

 自由にふらふら店内を闊歩する蒼依くんと違って、莉桜くんは気に掛けてるくれるし、外に出てしまった諦めもある。

 海に行くことを了承してないけど、朝陽と虎珀くんも楽しみにしてると言われたら断れない。


「水着なんて持ってないしなぁ」


 仕方ない。可愛い弟たちの為だ。

 そう自分に言い聞かせ、布面積の少ないビキニを蒼依くんに選ばれる前に早く買ってしまおうと意気込んだ。

 それに、やっぱりと言っちゃなんだが……彼等は目立つ。

 私は、横にいる莉桜くんを盗み見るように視線を向けた。


「ん? なに? 欲しいものあった?」

「いや、そうじゃないけど」

「そう。欲しいものあったら言って、僕らが買うから」


 買ってもらうつもりはないのだけど、莉桜くんの発言はとっても男前だ。そんなイケメン莉桜くんの服装を私はまじまじと観察する。

 服は、シンプルな黒の半袖のTシャツに細身のジーンズのスキニー。足元の靴はベージュのスタッズのついたスニーカーで、被っている帽子もベージュで色味に統一感が出てる。

 派手なローズマダーの髪も帽子のおかげで幾分か目立ちはしないけど、遠目から見てもシルエットがいい。

 それに中性的な顔立ちの莉桜くんは、何着ても似合うのだ。

 そんな莉桜くんとは対照的に目立つ服装なのが、青頭をゆらゆら揺らしてビキニを物色してる彼だ。

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