ヨルの探偵Ⅰ
賑わう繁華街からはぐれたような場所にあるBAR。
いつもなら閑静なその場所も、今日は鈴がなるような笑い声が響き渡り、楽しげにユラユラと揺れている。
「フハハッ! ヨルはホントに運が悪いネェ~! ボクは、ヨルのそういうトコがサイコーにスキだよ! アッハッハッ!」
「やめなさいマレ! ヨルが泣いてしまうでしょ!」
「…………運悪いのは事実」
「こらっ! 夜白もやめなさい!」
紗夜が止めてくれるも、黙って言うことを聞く奴なんてここには誰もいない。
「むっかつく……」
パッサパサのクッキー口に放り込んでやりたくなった。さっき通った路地裏にクッキー缶が捨ててあったはずだ。持ってこよっかな。
「アハハハ!」
陽気な笑い声。かれこれ30分は笑ってる2人。
わちゃわちゃと騒ぐ見慣れた顔の3人は、肩を落として脱力した様子の私を見て入ってきた瞬間に、それはわかりやすく反応を示した。
1人は、隠さず大爆笑。2人目は、憐れみつつ馬鹿にしたように隠れて笑っている。3人目は、そんな2人を止めつつ私に労りの言葉をくれた。
「ヨル、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃない。あの2人のせいで……」
恨めしく笑う2人を呪いの籠った目で睨む。
未だ笑っている2人は、仏のような止めてくれた彼女こと紗夜を見習うべきだ。