ヨルの探偵Ⅰ
この笑われっぷりに拗ねてしまった私だが、本当にここに来るまでに疲れたのだ。
仙波 蒼依に絡まれてゲーム開始。ようやくパティスリー屋さんに行けると思ったら脱走した犬に追われて全力ダッシュ。
何とか犬は捕獲されたが、パティスリー屋さんに戻りアップルパイを無事買ったあと、何故か酔っぱらいのおじさんに絡まれ、迷子の子どもにギャン泣きされ、てんやわんやな不運な一日。
体力も気力もない私からしたら、日中ここまで動くのは奇跡とも呼べる。
「疲れた……今日夜のお仕事はしない……」
「疲れたのは、ヨルが足遅いカラ! ドッグに追い掛けられたの見てタ! 面白かったヨ!」
「ねぇ、まさかだけど監視カメラで鈍足の私が逃げ回る様を見てたとか言わないよね?」
「……みてた。面白かった」
「バルス……っ!!」
うぎゃあ! と暴れ始めた私にまたマレくんが笑い転げるから腹立つ。紗夜が止めてくれたものの私の怒りは収まらない。
涙を流しながら笑うマレくんと夜白に、絶対に何倍にもして仕返ししてやると今日心に決めた。
忌々しき愉快犯共めと睨みつけながら、バカ2人にかまけてる暇はないので仕切り直す。
何故なら、仙波 蒼依とのゲームのがあるから。
「……やる気出なーい」
しかし、舞台をお膳立てするだけとはいえ、疲れのせいかマイナスな言葉しか口から出てこない。